それはあまりに突然のことでした。あさぎり夕先生死去──。
この文字の羅列を理解するのに一体どれくらいの時間がかかったことでしょうか。1990年代から2000年代のBLジャンルを牽引し、数々のヒット作を生み出してきた偉大なる作家がまたひとりこの世を去ってしまったのです。残された私たちにできることは、先生の作品をしっかりと後世に伝えていくということ。まずはあさぎり夕先生原作の人気シリーズをご紹介いたします。
舞台は日本の高級ホテル。主役はVIPフロア専属の花屋として働く青年とシークレットフロアに滞在する王族です。住む世界の異なるふたりの出会いは最悪なもの.....ではないんですよコレが！ アラブBLの多くは、傲慢すぎる攻に対して受が「なんだコイツ～!!」と悪い印象を持つところから物語が始まります。しかし、本作の主人公・蛍は「俺の好みド真ん中！」と心躍らせてしまうばかりか、隙あらばサイードと自分のアレな妄想を繰り広げる始末(笑) 「落ちぬなら 落としてみせよう 妻子持ちVIP」な蛍ですが、意外と強気な性格だったりします。年上の余裕を見せながらサイードを誘うシーンは生唾ゴクリな色気を感じました♡ サイードの他、ホテルオーナーや蛍の元カレなど、スパダリみの強い脇キャラが物語に華を添えているのもポイント。そして、不思議な能力を持つサイードの息子・ナフルを交えてのラブロマンスは、萌え・笑い・切なさのバランスが絶妙オブ絶妙！
本作はシリーズ3作目となっております。これを機にぜひ、あさぎり夕先生＆剣解先生の最強タッグ作を楽しんでみてください！

＜あらすじ＞ ｢お前は俺をたぶらかした大罪人｡俺こそが法｡逃しはせぬ｡死ぬまで俺の腕の中で身悶えるがいい!!｣高級ホテルの花屋で働く蛍は､現れた傲慢な男に無残に花を踏み散らされてしまう｡彼の名はサイード――シークレットフロアに滞在する砂漠の王族だった! 尊大で高飛車な王子との最低の出逢いから始まる運命のラブロマンス!!

これぞ王道中の王道、皆さんがイメージするアラブBLのイイところをほぼカバーしていると言っても過言ではない！ そんな万能作がコチラです♪

取材でアラブの地を訪れた官能小説家の蒼生。「こういうタイプの青年は王族に物申して気に入られちゃうんだよね～」と思いつつ読み進めてみると、まさにドンピシャ的中.....！ 偶然現れた王族・ラズワルドとひと悶着あり～の、拉致され～の.....。そして始まる愛妾としての生活！命と引き換えに毎晩カラダで奉仕キタ～！ 第一印象は最悪だったのに徐々にオズワルドに惹かれ始めたところで、王位継承問題に巻き込まれるわ、誘拐されて闇オークションに出されるわと、終始アラブならではのエピソードが満載！ また、あらゆるプレイを堪能できるエッチシーンにもご注目頂きたい。官能小説家という仕事をいかした(？)朗読しながらの乳首責め、騎乗位でのナカイキ、拘束プレイ！ さらにさらに!!ペ●スへのヘナタトゥー、そしてまさかの魔神による触手プレイなどぜひとも読んでほしいエピソードがてんこ盛り!!アラブの定番といえばコレ！ 自信を持ってオススメできる傑作でした。

＜あらすじ＞ ｢さあ､淫らなアラビアンナイトのはじまりだ｣アラブの国･イシュミナを訪れた官能小説家の蒼生｡傲慢な第一皇子･ラズワルドに反抗して捕らえられ､きらびやかな宮殿に攫われて！？ラズワルドとの激しいHで強引に快楽を教え込まれた蒼生は､命と引き換えに毎晩蕩けるまで身体でエロスを語るはめになり.....。エロプレイ満載!!

アラブという属性に加えて年下ならではのワガママっぷり.....いやもう、寧ろ清々しい！ そう叫びたくなる作品のご紹介です。
小柄で童顔、けれども有段者というボディガードが主人公。大使館内で高額な壺を割ってしまった代償として、滞在中に行動をともにするよう命じられます。全裸の身体検査(ヤッてませんよ！)でアレを小さいと笑われたり、王子の勝手な行動に振り回されたりと、散々な目にあうわけですが、どうしてか振り切れないというところがBLの鉄則。ファッションモデルのように洋服を着こなすムザッファルのかっこよさ、大きな体で抱き締められた時の高揚感.....ひとつひとつが恋へと着実に繋がっていて、こちらまでドキドキしてしまいそう！ 特に民族衣装と洋服とのギャップは、主人公でなくともクラクラすること間違いなし。人生を賭けた告白も注目ポイントのひとつ！ 「全てあなたのものになります」なんて.....惚れてまうやろ。年下アラブに振り回される年上日本人、何度でも読みたい設定に乾杯♪

＜あらすじ＞ 小柄で童顔だけど腕が立つボディガードの呉橋旭人は、産油国の第一王子・ムザッファルに目をつけられた！ 誰よりも俺様な王子になんて、これ以上ココロもカラダもかき乱されたくないのに.....！？

パッと表紙だけを見るとシリアス系の作品のように思えますが、読んでみるとコミカルな要素が多かった本作。
平凡サラリーマンが赴任先で出会ったのはイケメンの王子。見事ロックオンされるところまでは予想できても、何かを察した上司が尻穴ケア用品を毎度毎度差し入れてくるなんて誰が予想できましょうか(笑) 濃すぎる脇キャラに圧倒される形でストーリーは始まりますが、話が進むにつれてアラブならではの問題が浮上します。ふたりの出会いの真相、そして王位継承問題。そんな中でヘイダルへの恋情に気付いてしまったユキの戸惑い.....。仕事のために抱かれていたはずの彼がいつの間にか恋する乙女さながらにドギマギしている様子は何度見ても良いものです♪ もちろん、エキゾチックな色気を持つヘイダルと平凡と言いつつ妖艶さを醸すユキのエッチシーンもお忘れなく!!
笑いもエッチも胸キュンも、ぜーんぶ味わいたいという欲張りさんはぜひ読んで欲しい！

＜あらすじ＞ “今日から仕事は王族相手の肉体接待！？” 超強引でドＳな王子×ドドドド平凡な社畜会社員―地味な仕事をひたすらこなすだけのパっとしない日々を送るしがないサラリーマン鈴木。しかし、ちょっと語学が得意という理由でアラブの小国に転勤することに。待っていたのは超絶イケメン王子からムリヤリ処女を奪われたり、躾けられたり…な、セクハラつきの過重労働(スーパーハードワーク)！鈴木のリーマンライフは一体どうなる！？

続いてのご紹介は、スタッ腐のアラブBLの概念を覆した作品です。
新田祐克先生といえば、完璧に作り込まれた世界観とストーリー性が魅力的な作家さん。本作も「こんなアラブがあったのか！」と驚くこと必至です！
物語はアラブの定番、オークション会場から始まります。その日の目玉は、アラブの王族が所有してきた謎の肖像画とそのモデルとなった西洋人の子孫とされる美青年。5億という金額でアラブの王子が落札します。なるほど、この王子と美青年のめくるめく破廉恥ストーリーが始まるんだな？ そう思ったのも束の間！ 物語は肖像画の謎に迫るというものに.....！？落札された青年の先祖に何があったのか。数百年の時を越えて明かされる真実に、ページをめくる手が止まりません。
また、各キャラが身に着けている衣装やイスラーム特有の建築物の精密さも見どころのひとつ。もちろんしっとりと指に吸い付きそうな肌が魅力のエッチシーンもお忘れなきよう♡ 媚薬にオモチャ、羽根での愛撫など思わず鼻息が荒くなりそうなプレイの数々は必見です。
美しさと切なさと妖艶さ。それらを余すことなく楽しめるとっておきの一冊でした！

＜あらすじ＞ 選ばれし人間だけが参加を許されるオークション『セブンクラブ』。今夜の目玉は、ロットNo.7『禁覧の肖像』。アラブの王族が所有してきた謎に満ちた肖像画と、モデルとなった西洋人の子孫とされる美少年。それを纏めて5億で落札したのはアラブの碧眼の王子だった。「知りたいか。お前の祖先がどのような人生を送ったかを.....」今明かされる彼らの祖先が辿って来た切なくも美しい千夜一夜物語.....!! 表題作の他「赤珊瑚の法悦」「男弁天艶聞録」を収録した、新田祐克渾身の歴史ロマン玉手箱。

アラブBLに出てくる日本人の共通点は何でしょうか？
スタッ腐の感覚だと、強気あるいは健気のどちらかが多い気がするのですが、本作の主人公・保はちょっと変わった健気キャラ。というのも、アラブBLには珍しくイマドキな、軽い感じの若者なのです。
就活に失敗し、バックパッカーとしてアラブを訪れた保。物語開始早々にテロリストに拉致されてしまいます。そんな彼を颯爽と助けてくれたのが褐色アラブ皇族のハーディ。こちら何とも紳士で、テロ活動や革命運動で情勢が不安定だからと保に日本帰国するよう促してくれるんですよ！
アラブ攻の必殺技・監禁がない！(笑) そんな彼のために何かしたいと思った保は、帰れという言葉を跳ねのけて「殿下の役に立ちたい！」と主張します。さてここがアラブの腕の見せどころ！ そう、カラダで説教です!! 「キタキタキタ～！」と思わずガッツポーズをしそうになりますが、やはりアラブ攻はこうでなくちゃ♡
ハーディ曰く「平和ボケ」した保が熱砂の国の未来を変える！ 気になる結末はご自身の目でお確かめくださいね。

＜あらすじ＞ 「お前みたいな柳腰の可愛い奴がウロウロしてたら男でも危険だ」就活バトル惨敗、逃避旅行で熱砂の国にやってきた保。テロリストに拉致られ大ピンチのところを助けてくれたのは、褐色の肌の精悍な皇族・ハーデイ殿下だった。命をかけて祖国を守るべく奮闘する殿下にどうしようもなく惹かれてしまう。危険だから帰れと言われても、殿下の役に立ちたい保は留まる決意を覆さない。殿下は身体でドSな説教を試みるが――！？

アラブBLの醍醐味のひとつが「現実味のなさ」だと思っているスタッ腐ですが、この作品を読んだことでアラブBLの無限の可能性を見出しました。
普通のサラリーマンが、スケキヨ状態で噴水に突っ込んでいたアラブ王族を発見。そんな出会い方をしたふたり(笑) この段階ではまだファンタジー性が高いですよね！ が、本作の舞台が日本であること、そして主人公が普通のサラリーマンであることから、アラブものなのに妙にリアリティーを感じてしまいます。
無表情ゆえに「人形のようだ」と社内で噂されているトーゴは、たとえ王族だろうと態度を変えません。完璧なまでの塩対応にクスッと笑いが零れます。そんな彼が熱烈なサーナに甘やかされていくうちに(心もカラダも♡)、少しずつ表情豊かになっていく過程が非常に愛おしい！ 住む世界の違いを目の当たりにして身を引こうとするトーゴの健気さに涙ほろりなシーンも.....。しかし、そんなしんみりとした展開も半端ない包容力と一途さを兼ね備えたサーナにかかればノープロブレム！ あまあまなハッピーエンドですので安心してお読みくださいね。
アラブでありながらどこか身近な要素を感じられる.....。日常系アラブという新ジャンル、皆さんも一度体験してみてはいかがでしょうか。

＜あらすじ＞ 職場でセルロイドと揶揄されるほどに感情の起伏が乏しい青年・白波冬吾の前に現れたのは尊大にして天真爛漫な異国の王子・サーナ。ひょんな出会いにも動じない冬吾を気に入ったサーナは強引にホテルへと連れ帰り酒を酌み交わすことに。すると、だんだん酔いがまわって色っぽい表情を見せはじめる冬吾に目を奪われたサーナは「私がお前を暴いてやろう」とベッドへ押し倒し――…。運命の一夜をきっかけに真実の愛が開花する溺愛サクセスストーリー

王族と聞くとどうしても俺様で強引なタイプを想像してしまうのですが、本作のハーリドは至って紳士。第一王子である兄の手に落ちそうになった圭一を救ってくれたのが彼でした。アラブBLお決まりの「初対面で気に入られる」という展開ではなく、少しずつ心を通わせていく様子を丁寧に丁寧に描いています。まさに純愛アラブBL！ ゆったりとしたテンポで進む物語は、まるで無声映画を見ているかのようですし、行間を読ませるようなセリフ回しやコマ割も山中ヒコ先生ならではの味わい深さがあります。作品内で多くを語らないからこそ独特の余韻と切なさを持つ.....。読み終えたあとに気付けば涙が頬を伝っていました。

第一王子の元へ返されることが決まった圭一が「だいてくれよ ほかのおとこに だかれるまえに」とハリードに告げるシーンは、切ないBLが好きな全ての腐女子に読んでもらいたい.....！ 読み手にその後を想像させるかのような終わり方も、個人的にとても気に入っています。
心理描写をとにかく重視したいという方に強くオススメしたい一冊でした。

＜あらすじ＞ 貧乏美大生・鈴木圭一が目覚めると、そこは砂漠の国のオークション会場だった。借金のカタに奴隷として出品された彼が、強欲な第一王子の手におちようとしたその時、その弟であるハーリド第二王子によって買い上げられる。ハーリドの奴隷となった鈴木は日々逃亡を企てるが、王子の優しさに少しずつ惹かれはじめ…。